AM2:21

深々と、思うことを

烏がいない街

新居に越してきて最近ふと思うことがある。


この辺りには烏が見当たらないような気がする。


烏の独特な鳴き声も聞こえない。


思えば、私の周りにはいつも烏がいた。


ガァガァと低い声で鳴くその見慣れた姿をいつも気を止めることなく過ごしていた。


烏を気に止めるようになったのは、祖父が亡くなってからだった。


祖父の亡くなったあの日の烏は

まるで死の知らせを届ける使いのように

ガァガァといつもより多く鳴いていた。


その日からふと見かける烏に親しみを持つようになってきていた。


烏はこちらを向いてガァ、と鳴くと

何処かに飛んでいくのだ。


何ら大したことじゃない。

ただ祖父の面影を烏に移しているだけ。


分かってはいるものの、あの日からつい烏を探してしまうのだ。


あの時の烏はどこに行ったんだろうか。


自由に飛び立っているだろうか。


できることなら

祖父の代わりに、遠くへ遠くへ

美しい景色を見せてあげて欲しい。